2から7ページ 八幡平市 市制施行20周年 ハタチは、はじまり  本市は、9月1日に市制の施行から20年を迎えました。  本号では、先人から受け継ぎ発展させた本市の魅力や特徴を写真で紹介するとともに、これまでの主な出来事を年表で振り返ります。また、まちづくりの未来を、市民と共に描くため、さまざまな分野で活躍する皆さんの抱負や希望を紹介します。  八幡平市は、平成17年9月1日に旧西根町、旧松尾村、旧安代町の3町村の合併により誕生し、本年9月1日に市制施行20周年という節目を迎えました。  総面積862平方キロメートルの市域に、2万2,787人(8月末現在)の人口を有する本市は、豊かな自然を生かした観光振興を進めているほか、安代りんどうを始めとした農業、商工業、伝統芸能など、それぞれの町村からつないだ分野に磨きをかけ、歩みを進めてきました。また、海外からの誘客や再生可能エネルギーの地産地消など、新しい取り組みにも果敢に挑戦するなど、さまざまな魅力と特徴を兼ね備えた市です。  この20年の間、私たちは東日本大震災の発生や少子高齢化の進行、新型コロナウイルスの流行、情報通信技術の進歩など、激しく変化する社会状況に対応してきました。今後も私たちは変化に対応し、予測困難な時代を生き抜いていかなければなりません。  本市は、恵まれた地域資源を生かし、市民の声と英知を集めることで、行政課題の解決に果敢に挑戦し、人や企業に選ばれるまちとして、さらなる発展につなげていきます。 メッセージ 八幡平市長 佐々木孝弘  旧3町村が合併した平成17年9月1日。農と輝の大地の将来像を掲げて誕生した八幡平市への大きな期待に胸を弾ませ、市民の皆さまと共に喜び合った日から20年という節目の日を迎えました。  この間、さまざまな課題に直面しながらも、子育て支援、医療提供体制、にぎわい創出、地熱電力などの豊富な資源の活用などの多くの施策の充実を図るとともに、旧3町村の特徴を生かした取り組みにより、市民生活の向上と市勢発展につなげてまいりました。  一方で、市民の一体感の醸成は、まだ道半ばだと感じています。それぞれの地域の良さを認め合い、交流することによって、郷土愛を深めてまいりましょう。次の10年は、第3次八幡平市総合計画基本構想のもとに、市民の皆さまと一体となって歩みを進めていきます。 つながり、磨かれ 拓いた魅力 圧倒的な自然と充実した観光資源  日本一長い雪の回廊、焼走り熔岩流、八幡平ドラゴンアイ、為内の一本桜、不動の滝 他にも多数 多彩なスポーツ環境  県内唯一のスキージャンプ場、4カ所のスキー場、ラグビー場、射撃場、相撲場、屋内運動場(全面人工芝) 他にも多数 自然エネルギーの活用  地熱発電、水力発電   日本初の商用地熱発電所「松川地熱発電所」を含む3つの地熱発電所   地熱発電による電力を核として設立された日本初の地域新電力会社「はちまんたいジオパワー」 特色ある特産品  生産量日本一の安代りんどう、ホウレンソウ、八幡平マッシュルーム、八幡平牛、コマクサ杜仲茶ポーク、八幡平サーモン、地酒「わしの尾」、安比塗、地熱染め 他にも多数 礎を築いた20年  八幡平市誕生までの歩み 明治8年  浅沢村、岩屋村、五日市村が合併し「浅沢村」が誕生  荒屋村、曲田村、目名市村、滝の又村が合併し「荒屋村」が誕生 明治22年  田頭村、平笠村が合併し「田頭村」が誕生  平舘村、堀切村が合併し「平舘村」が誕生  寺田村、帷子村、荒木田村、上関村が合併し「寺田村」が誕生  松尾村、野駄村、寄木村が合併し「松尾村」が誕生  荒屋村、浅沢村が合併し「荒沢村」が誕生 昭和31年  大更村、田頭村、平舘村、寺田村が合併し「西根村」が誕生  荒沢村、田山村が合併し「安代町」が誕生 昭和36年  西根村が町制を施行し「西根町」が誕生 平成12年  市町村の行政体制の在り方について県民が広く議論するためのたたき台として、岩手県が「岩手県広域行政推進指針」を策定し、3町村の枠組みによる合併を提示した 平成15年  西根町、松尾村、安代町合併研究会を立ち上げ  西根町、松尾村、安代町任意合併協議会を設立 平成16年   3町村会議で合併協議会設置を議決  西根町、松尾村、安代町合併協議会を設立 平成17年  合併調印式を開催  八幡平市施行を総務省が告示  3町村で閉町式、閉村式を開催 平成17年9月 「八幡平市」誕生     10月  初代市長に田村正彦氏が就任     11月  合併記念式典を開催 平成18年4月  八幡平幹部交番、八幡平消防署が設置     11月  市民憲章、市の花、鳥、木を制定 岩手県宮古市と姉妹都市を締結 平成19年1月  沖縄県名護市と友好都市を締結     3月  松尾中、西根中で新体育館が落成     4月  あしろ保育所畑分園を開所 平成19年1月  沖縄県名護市と友好都市を締結     3月  松尾中、西根中で新体育館が落成     4月  あしろ保育所畑分園を開所 平成20年4月  雪冷房リンドウ培養育苗施設が落成  安代地区コミュニティバスが運行開始 平成21年7月  市道岩手山1号線(岩手山パノラマライン)開通     8月  大更コミュニティセンターが落成 平成22年3月  田山小学校新体育館が落成     11月 八幡平市民歌を制定 平成23年3月  東日本大震災。市は支援物資提供などを実施     4月  西根松尾地区でコミュニティバスが運行開始     12月 松尾コミュニティセンターが落成 平成25年11月 江間章子さん生誕100周年記念事業を開催 平成26年11月 市役所新庁舎が開庁     12月 国道282号西根バイパスが全線開通 平成27年3月 JR北森駅が新庁舎隣に移設開業     11月 市合併10周年記念式典を開催   新岩手農業協同組合花卉生産部会が天皇杯を受賞 平成28年2月 希望郷いわて国体冬季大会スキー競技会を開催     10月 希望郷いわて国体正式競技5競技とデモンストレー ションスポーツ1競技を開催     12月 市起業家支援センターを開設 平成29年11月 小林潤志郎選手がスキージャンプW杯初優勝 平成30年2月 大更駅舎がリニューアルし営業開始 平成31年1月 松尾八幡平地熱発電所が本格運転開始     3月 小林陵侑選手が日本男子初のW杯ジャンプ男子個人総合優勝を果たす 令和2年4月 市消防団を11分団に再編し、始動     6月 奥南部漆物語 安比川流域に受け継がれる伝統技術 が日本遺産に認定     8月 八幡平市立病院が移転新築 令和3年6月 東京オリンピック聖火リレーで市内を小林陵侑選手らが走る     7月 ルワンダ選手団が市内で東京オリンピック直前合宿を実施    10月 松尾保育所が開所  2代目八幡平市長に佐々木孝弘氏が就任 令和4年2月 北京オリンピックで小林稜侑選手が金、銀メダル、永井秀昭選手が団体で銅メダルを獲得     3月 小林陵侑選手が2回目のW杯ジャンプ男子個人総合優勝を果たす  平舘コミュニティセンターが落成     8月 ハロウインターナショナルスクール安比校が開校     9月 牛預託施設「市?殖育成センター」が開所   池貞藏氏に名誉市民の称号を贈呈 令和5年2月 「はちマルシェ」「あしろマルシェ」を初開催   いわて八幡平白銀国体を開催 令和6年3月  安比地熱発電所が営業運転を開始     4月 「八幡平市交流複合施設(8テラス)」が着工  西根総合支所が大更駅前地区に移転     7月  地域新電力会社「はちまんたいジオパワー」を設立    12月  田山パーキング緊急入退出路が完成 令和7年8月  市制施行20周年記念式典を開催 写真で振り返る 平成17年 旧西根町、旧松尾村、旧安代町は、平成17年1月13日に合併協定調印式を行い、56に及ぶ合併協定項目を盛り込んだ協定書に署名し、調印した。      平成17年9月1日に、八幡平市が誕生。旧市役所本庁舎(現JA新いわて八幡平支所)前で開庁式を行い、関係者のテープカットで新市誕生を祝った。八幡平市長選挙を実施するまでの市制を担う職務執行者に佐々木正四郎氏が就任した。  平成18年 昭和61年10月に旧松尾村と旧田老町(現宮古市)が締結し、積み重ねた姉妹都市交流を、合併後も継続することを確認した。 平成19年 桜が結ぶ縁をきっかけに、昭和63年1月に旧松尾村と沖縄県名護市が締結し、積み重ねた友好都市交流を、合併後も継続することを確認した。 平成22年 市民の一体感の醸成を図り、市が理想のまちづくりを目指すため、八幡平市民歌を制定。市民憲章推進大会で初めて披露した。 平成26年 県が平成6年度に事業着手した国道282号西根バイパスが、20年の歳月をかけて全線開通し、パレードが行われた。 平成27年 旧北森駅から約500メートル移動し、市役所新庁舎と隣接した新北森駅が開業。同日には結のひろばと交通広場を結ぶ「結ロード」も開通した。 令和4年 「日本一のリンドウ産地」の礎を築いた吉池貞藏氏に、市制施行後では初となる名誉市民の称号を贈呈した。  進み続ける これからも  インタビュー 「将来も住みたい」と、子どもたちに思ってもらえるような八幡平市に  JA新いわて花卉生産部会 りんどう専門部長 勝又勝男(かつお)さん(荒屋新町)  結婚を機に、婿入り先の農業を手伝うようになったのがきっかけで、リンドウ栽培に取り組み始めました。現在は義理の両親とは経営を分け、約一町一反歩の農地にリンドウを栽培し、妻と二人の作業で年間35万本の切り花を出荷しています。  将来、子どもたちにもリンドウ栽培に取り組んでほしいなという願望はありますが、本人たちがやりたいことを選択すれば良いと考えています。  働く場や買い物場所、飲食店なども含め、将来も住みたいと思ってもらえるような地域になればと思うし、そんな地域を作っていかなければと思っています。 美しい景色や人柄は、無くならないで欲しい  いちごの魅力をキッチンカーで広める 彩花園 BERRY HAPPY 伊藤マディソン・レイさん(北村)  結婚を機にアメリカから移住し、夫の実家が営むいちご農家を一緒に手伝っています。全くやったことのない作業ばかりですが、今は、次の季節に向けて、いちごの苗を楽しみながら植えています。私と夫が家業を手伝うようになり、人出が増えたので、キッチンカーでけずりいちごの販売を始めました。徐々にお客さんが増えてきて、うれしいです。さらにたくさんの人に彩花園のいちごを食べてほしいです。  八幡平市は景色がきれいでとても良いまちだと思います。知らない人にも笑顔であいさつをするところは、アメリカと似てます。良いところは、この先も無くならないでほしいです。 ヒト、モノ、コトの魅力発信で産業のブランド化、高付加価値化を  地熱を使った唯一無二の染色技術で色彩を表現 株式会社地熱染色研究所 染色作家 高橋一行(かずゆき)さん (松川国有林)  八幡平の山懐で育ち、この地でしかできない地熱蒸気染色を生業に暮らしています。  市内でも最も標高の高い山奥で暮らしているのではないかと思いますが、ここで暮らし50年を過ぎると、不便さよりも恩恵の方を感じるようになりました。とは言っても、都会と比べ、暮らしていく上での便利さや仕事の上で劣ることも確かです。しかし海外では、服飾関係の分野において、不便な地方や田舎でもブランドとして成功した企業もあるので私もそれを夢見ます。  行政も含め、私たち市民も積極的に八幡平市のヒト、モノ、コトの魅力の発信が必要と感じます。そうすることで、八幡平市の産業のブランド化、高付加価値を認められる存在になると思います。 名所や体験、食事、宿泊などが連携しお客様を迎えられるような観光地に  カフェ食堂と宿を両親と営むキッチンカフェかっぱ 小林加奈子(かなこ)さん (温泉郷)  昭和55年8月10日に両親が「御食事処かっぱ」を創業し、私はお店を切り盛りする両親の背中を見て育ちました。社会人となり、歯科衛生士として働いていましたが「お店を閉める」という両親の言葉を聞き、家業を継ごうと決意。令和4年3月にお店をリニューアルし、両親と共に再出発しました。  両親が築き上げてきたものを大切にしつつ、自分の色もプラスしながら「また行きたい」と思ってもらえるお店作りを目指しています。また、県民の森の企画展に合わせ、コラボメューを提供するなど、さまざまな場所や人とのつながりを大切にしています。市内の観光地や飲食店など、点と点をつなぐ動きが活発化し、観光地としてさらに盛り上がれば良いなと思います。 「ここで育って良かった」と胸を張れるよう力を尽くしたい  「みんなの笑顔のために」がモットー 杉の子こども園 園長 遠藤武敬(たけのり)さん (松川)  平成8年に保育園に勤め始め、29年がたちました。この間、子どもを取り巻く環境は大きく変わってきましたが、その笑顔とあふれる元気は、今も変わりなく私たちにたくさんの幸せを届けてくれます。  子どもを育てる保護者の皆さまも、かわいい我が子の笑顔から元気をもらい、生きがいを感じ一生懸命に働き頑張っています。私は、そんな温かく幸せな家族の姿に日々触れることができ、心から感謝しています。  子どもの笑顔があふれるまちに育った子どもたちが、大人になった時に「八幡平市で育ってよかった」と胸を張ってくれるよう、微力ながら力を尽くしていきたいと思っています。 自然、文化、食などの個性を熟成させて市の魅力を、濃い輪郭で描けるように  安比塗、漆器の良さを次代に伝える 安比塗企業組合 代表理事 工藤理沙(りさ)さん (曲田横間)  漆を学ぶため奈良県から移住し、今年で22年になります。長くここで塗師として働いていますが、八幡平市は、きれいな景色がずっと変わらずにあることがすごいなと感じます。  自分たちが拠点とする安比塗漆器工房は、安代町時代から運営主体が変わりましたが、漆器を作り、販路を拡大していくことをずっとやってきました。自分たちが携わったのはこの一瞬かもしれないけれども、荒沢漆器と呼ばれていた昔から続く漆器文化を、次の世代が生業にしたいと思えるようにつないでいきたいですね。市内の伝統や文化などの魅力をもっと熟成していって、市内外の人から「八幡平市って楽しいよね」って言ってもらえるようなまちになったら良いなと思います。