24ページ キラリ輝人 Vol.137 八幡平の大自然に生かされていることに感謝 あけびつるで編んだバッグや自然素材を生かした作品づくりに取り組む 工房 寿限無(じゅげむ)の田中潔(いさお)さん 73歳 南寄木  昭和26年生まれ。青森県出身。旧国設八幡平スキー場でのアルバイトをきっかけに、本市(旧松尾村)に移住。アウトドア全般が好きで、天気の良い日は「ほとんど外出」している。あがり性で口下手で無口と自己分析。3つのC「Change Challenge Creative」(変革、挑戦、創造)をモットーに制作に取り組む。  「いろいろなものを見聞きし、作品にオリジナリティが出るようにと心掛けています」と語るのは、ミツバアケビのつるを使ったバッグなどの制作に取り組む田中潔さん。作品は自然な素材感と上品さが目を惹きます。  20代のころ、人生の方向性を描けないまま都内で働いていた田中さん。携わった広告の仕事で、ユーラシア大陸を自動車で走破。アフガニスタンの荒野に地平線まで延々と延びる道路を目の前に「存在のちっぽけさを感じ、人生観が変わった」と言い、トルコでは「木々の緑や湖の色に癒され、視覚を通じて、心が乾いていたことを実感した」と振り返る。  その後、あこがれていた岩木山の麓で、以前から興味のあった「籠工芸」に取り組もうと決意。30歳で移住し、強くしなやかなあけびつるを使った作品づくりに取り組み始めた。  当初は材料の採取の場所が分からず、あちこちの山を探し回ったという。材料に使うのは、地面を這う「ライナー」と呼ばれる部分だけで、枝分かれ部分や芽、根を切り形を整えるのに手間はかかるが、作品づくりがうまくいったときは「売り物にせず、自分の手元に置いておきたいほど、うれしい」とほほえむ。  「緑と水が豊かで、皆さんにも優しく迎えてもらいました」と、縁あって青森県から移り住み、岩手山の麓で作品づくりを続けて約30年。作品は産直やセレクトショップで販売している。  出張工作教室の依頼も多い田中さん。完成させた作品をうれしそうに眺める参加者の姿に、自分も喜びを感じるという。「どんなことも、まずは体験してみることが大事かな」と、多くの人に八幡平の自然素材を使ったものづくりに親しんでほしいと意欲を燃やす。 編集後記  15年ほど前、蔵見学で訪問した際のイメージが今も残っており、わしの尾さんをいつか広報で、と考えていました。また、偶然 立ち寄ったカフェに飾られた田中潔さんのあけびつる作品を見かけたのも1年以上前。機会があり、どちらも本号で掲載することができました。(智)  今月は叙勲や表彰を受けられた皆さんを紹介。限られた取材時間の中で、これまでの活動に込めた思いなどをたくさんお話していただきました。取材中、皆さんから激励やいたわりなど心温まる言葉も掛けていただきました。ありがとうございました。(千)