2、3ページ 安比塗、四十年の先へ。  かつて安比川流域で栄えた漆器産業。これを復活させ漆器文化を後世に引き継ごうと昭和58年に開所し、多くの研修生を受け入れてきた安代漆工技術研究センター。 この40年で巣立った修了生は78人に上ります。  40周年記念展として7月に行った展示販売会には、多くの人が訪れ、漆製品を買い求める姿が見られました。 これは、これまで続けてきた取り組みと品質への信頼の証と言えるのではないでしょうか。  本号では、安代漆工技術研究センターの概要や果たしてきた役割などについて紹介します。  豊富な漆の産地という恵まれ た条件を生かし、藩政時代から生活に根ざした漆器を作っていた安代地区。 最盛期には約500人いたといわれる安代の塗師は、戦後の生活様式の変化やプラスチック製品などの普及により減少していき、漆器産業は衰退していきました。  安代地区の漆器産業を再興するため、昭和58年4月に開設されたのが安代漆工技術研究センター(旧安代町漆器センター)です。  センターでは、2年間の基礎過程、1年間の専攻課程を通し、自分で使う道具の作成から木地の制作、塗り、販売方法まで幅広く学びます。 ここで技術と知識を習得した修了生は、各地で活躍しています。 センターで受け入れている研修生は現在6人。 県内外から多種多様な経歴を持った人が集まるセンターでは、どんな塗りの漆器にも対応できるよう、安比塗に限定せずさまざまな漆の技法を学びます。  センターが開所して間もない頃は、それまで漆に触れたことがない研修生が大半でしたが、最近は大学などで漆を学んだ経験のある人も増えてきました。 今では、センターは実践に基づいた深い知識や技術に加え、将来的に職業として成り立つよう、商品としての漆器作りに重点を置いて指導する貴重な研修機関となっています。 インタビュー 指導者 冨士原 文隆(ふみたか)主任技師  センターで40年間指導をしてきましたが、ようやく安比塗が産業、特産品と呼ばれるようになってきました。  大事なのは、継続していくことだと思います。また、若い人が定着する土台作りにも力を入れたいと考えています。 生産と販売を担う安比塗漆器工房がその第一歩で、今後も活動を広げ、安代地区に定着する人が増えていけば良いと思います。 研修生 専攻課程 齊藤 志保(しほ)さん  以前に仕事で漆器工房に訪れた事がきっかけで、漆に興味を持ちました。  研修を受けていると次々知りたいことが増えていき、2年間はあっという間でした。 専攻課程が修了するまであと半年。その後については検討中ですが、何らかの形で漆に関わっていきたいです。 平成27年度修了生 斎藤 奈津美(なつみ)さん   センターにはいろいろな価値観や考えを持った研修生が集まるので、互いに刺激を受けながら充実した2年間を過ごしました。  今は、自分の作品をきっかけに、漆を全く知らない人にも興味を持ってもらえるような作品作りを目指しています。