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連載コラム(6) 山賊まつりの舞台裏

山賊まつりの舞台裏

 うにご飯に、毛がにラーメン、イカ焼き、たこ焼きならぬ茎こんぶ焼き…。

大勢でにぎわう会場

大勢でにぎわう会場

アワビを日本酒とバターでぐつぐつ

アワビを日本酒とバターでぐつぐつ

 特産品を販売する高橋さん(11月23日、宮古市で)

特産品を販売する高橋さん(11月23日、宮古市で)

 三陸沿岸の海の幸と、もちろん地元の山の幸も勢ぞろいし、食欲の秋を堪能できるイベント「山賊まつり」。毎年、八幡平の紅葉がピークになる10月の連休に開かれ、全国の観光客でにぎわう。市観光イベント実行委員会によると、今年は3万6800人が訪れ、過去最高の売上額を記録した。

 最終日の3日目、終了の夕刻まであと1時間と迫ったときのことだ。

 片付け作業にとりかかる出店者も増えるなか、宮古市田老地区のブースには、まだ箱いっぱいのアワビが残っていた。

 「せっかく時間と油代をかけて、この日のために来てくれたのに、このまま帰っていただくのはしのびない」

 そう考えたのは、山賊まつりのスタッフとして参加していた市産業振興特産品販売課の高橋恵美子さん(37)だ。駆け寄り、両手で箱を持ち上げると、「アワビいかがですか」と呼びかけ、会場を回り始めた。

 まず向かったのは、野外ステージの演歌を聴いている観客席だ。

 「解凍されてきて、いいかんじになってきた。ほら、身もこんなにもりっとしている」

 高橋さんの“実況中継”に、何人かの観客が集まってきた。が、なにやらそれぞれ考え込んでいる。

 「でも冷凍なのよね。硬いんじゃない」

 女性の一人が切り出すと、「煮切り酒にひたしてあげると、さらに軟らかくなりますよ。バターで焼いて、ステーキとして食べてもおいしいですよ」と高橋さん。

 「2個」と女性が財布を取り出すまで、ものの一瞬だった。

 それからも、人だかりを見つけては、高橋さんは飛び込んでいく。調理法に不安を持つ人には「たわしでゴシゴシとこすって、スプーンですくうと簡単にとれますよ」。すぐ食べる予定はないと話すお客には「お正月用に冷凍したらいかがですか」

 相手の痒いところに、瞬時に手が伸びていくような、即興で小気味よいやりとり。間近で聞いていて、気持ちよい。と感じていたいところだったが、いつしか手伝い係になった私は、次から次へと手渡されるお金を受け取るのにてんやわんや。袋詰め作業も間に合わない。

 30分もしないうちに、100個以上あったアワビは、みごと完売した。

 私はといえば「800円のところが600円ですよ」という台詞を繰り返すばかりだったが。価値を伝える、ということは、なんと難しいのだろう。

 家に帰って、高橋さんから聞いたレシピを、さっそく試してみた。やわらかいのにコリコリとした歯ごたえや、磯の香りが口の中に広がり、最高のビールのお供だった。

 「お客さんには、思い出も含めて買ってほしい」との思いで、長年、特産品の販売にかかわってきた高橋さんには及びもしない。けれども、「そういえば、この間の山賊まつりで買ったあわび、とてもおいしかったですよ」と、今度こそは、自信を持って、誰かに伝えてみたくなった。(今川友美)

   

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