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連載コラム(5) 舞台稽古 手応えつかむ

 舞台稽古 手応えつかむ

 午後7時過ぎ、仕事を終えた人たちが、安代地区の住宅街の一角に続々と集まる。市民有志の劇団「ふるさと発信株式会社」の公演まで、2週間あまりと迫った。この日は、台本を手放して動作や表情を付ける「立ち稽古」がおこなわれていた。

稽古に励む出演者ら稽古に励む出演者ら

演出を手がける佐藤さん(左)演出を手がける佐藤さん(左)

 稽古場の階段には歴代公演のポスター

稽古場の階段には歴代公演のポスター

  次回から通し稽古だ次回から通し稽古だ

 8月の初稽古以来、週3回、動きをつけずに流れをつかむ「読み合わせ」、台本を持ちながらの「半立ち」などを経て、ようやくこの段階までやってきた。 

 本番に向けて、メンバーの気持ちがいざ一つにーー。という展開をほのかに期待していたが、現実はそう簡単にはいかない。 

 出演者の大半が、まだ台本を持っている。台詞を覚えたりと、目の前のことに手いっぱいだ。メンバーもなかなかそろわず、緊張感もいまひとつ。演出を手がける佐藤新さん(39)は「三歩進んで二歩下がるどころか、四歩下がってますよ」と苦々しく語る。 

 葛藤を抱えるラグビー選手と、女手一つで育ててきた母親とが思いの丈をぶつけ合う最後の場面は、物語の山場といえる。選手役の立花浩さん(48)と、母親役の齋藤有希さん(30)は、戸惑っていた。佐藤さんは、やり直しを告げた。

 その時、「ちょっと待って」と齋藤さんが立花さんと話し始めた。「演技は一人でしてるんじゃない。私の目を見て」

 同じシーンがまた繰り返され、終わると、稽古場はしんとした。共演者らがみな、2人の様子を固唾を呑んで見守っている。これまでにはみられなかった光景だ。

 何かがその場を変えたのだろう。私にとって、頬を叩かれる立花さんは、もはや48歳の市役所のおじさんではなく、ラグビー選手の青年で、齋藤さんは彼を育てた母親だった。

 帰り際、齋藤さんは立花さんの変化について「初めてぶつかってきてくれている感じがした。一人で台本を読んでいる時には思いもしなかった、180度違うものをポンと投げてくれて、それを返した感じ。私たちは芝居をしているんだということを、感じられた瞬間だった」と振り返った。

 立花さんは「え、そうだったの。なにも考えてなかった」と笑いながらも、「こうかな、ああかなって迷いながら、本番までやっていくんだと思う」と話した。

 私も役をいただき、稽古に参加しているが、毎回のように煮え切らなさを持ち帰る。にもかかわらず、次行ったときには、思いもしなかった反応を、相手が返してくれたりする。

 一方的に誰かが受け手で、誰かが与え手で、なんてことはこの世の中にはありえない。芝居を通してそんなことを考えさせられるなんて、やる前には思いもしなかった。

 現状は、致し方ないのかもしれない。けれども、私たちは動かし、動かされて、こうやって小さな手応えをつかんできている、はずだ。(今川友美)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

劇団「ふるさと発信株式会社」第17回公演

「水平線の歩き方」(作・成井豊)。11月30日(日曜日)午後2時開演(午後1時半開場)。市立安代小学校体育館。前売り券500円、当日券700円(中学生以下無料)。

  

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