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連載コラム(4) 山の神に息吹き込む

 山の神に息吹き込む

 「ほら、このおじさん、コロボックルみたいでしょ」。先月開かれた「八幡平の神社 ふしぎ発見」と題した学習会。講師で市博物館学芸員の小田嶋なつみさん(26)がそう言って写真をスクリーンに映すと、会場が笑いに包まれた。 

コロボックルおじさん(兄川稲荷神社、市博物館提供)コロボックルおじさん(兄川稲荷神社、市博物館提供)

癒し系メンズ(兄川稲荷神社、市博物館提供)癒し系メンズ(同)

 厳ついメンズ(佐比内山神社、市博物館提供)

厳ついメンズ(佐比内山神社、市博物館提供)

  山の神に語りかける小田嶋さん山の神に語りかける小田嶋さん

 同館で開催中の、市内21社に祭られた計47点の神様を紹介した企画展「おらほが鎮守!」にちなんだ催しだ。“コロボックルおじさん”というのは、安代地区のある神社に安置されている山神像のことで、身長はたったの22センチと小柄だ。

 森の精霊を具現化したものとされ、「口をへの字に結んで厳めしい表情をしているのに、太い胴体のわりに、細い手足と素朴な彫り。どこかユーモラスで愛らしい」と小田嶋さんは魅力を語る。

 ほかにも、柔和な表情で合掌する「癒し系メンズ」、右手に斧を持ち、髪を逆立たせ憤怒する「厳ついメンズ」といった親しみやすい言葉で、山の神を次々とキャラクター付けし、聞き手の興味をかき立てた。

 企画展では、こうした素朴さや豊かな精神性が表された、全国的にも珍しい男性の山神が多く祭られる安代地区を含む市内3地区を、エリアごとに紹介。それぞれの特徴も浮かび上がらせた。

 鹿角街道を通して伝わった都の文化が溶け合い、独自の文化へと育まれていった安代地区。開拓者精神が息づく西根地区、岩手山や八幡平をはじめとする雄大な自然を仰ぎ見ながら、山や森、岩、木々にも神を見出した松尾地区――といった具合だ。

 コロボックルおじさんは、どんなところに住んでいるのか。10月下旬、小田嶋さんの案内で兄川集落の稲荷神社に向かった。境内には杉の大木や巨木の切り株。うっそうとした森が広がり、今にも小人が飛び出してくるのではないかと思う。

 お参りをすませ、「山神社」と書かれた社の扉を小田嶋さんが開けると、おじさんは展示中で不在だったが、そこには木彫りの“森のお友達”が楽しそうに待ち構えていた。

 木のカーブをうまく生かした蛇の燭台、つるんとした背中をした狐、ティーカップに収まりそうなくらいに小さな犬。「神様も、一人だけでいるよりも、こうやってみんなでいるほうが心強かったんじゃないでしょうか」と小田嶋さん。

 「たぶんですけど、今日みたいな雨降りで寒い日、当時の人が火の前に腰掛けて、山仕事の片手間に、黙々と彫っていたんじゃないかなあって思うんです」

 なぜだかその光景、よく分かる。小田嶋さんの肩肘はらない雰囲気や、カジュアルな語り口と、当時の人の信仰への身近さとが、だぶって見えるからだろうか。

 これまで歴史の教科書などで目にした、洗練され、技巧を凝らしたものとはひと味もふた味もちがう、てらいのない山の神々たち。小田嶋さんは「芸術的価値があるかないかではなく、当時の人が、神に対してどう思っていたのかという精神性を知るための、かけがえのない資料」だと存在意義を語る。

 そんな地域の宝ともいえる存在がいま、危機に面している。資料を収集する過程で、長年の年月による風化や虫食い、カビ、守り手たちの高齢化、薄れつつある地域の関心に、小田嶋さんは気付かされたという。

 「あと10年たったらなくなってしまいそうな資料も多くあった。大事なものを、大事だと思わなければ、やがてなくなってしまう」

 その時代、そこに住む人々によって形が与えられてきた山の神様たち。時を経たいま、小田嶋さんのような新たな息を吹き込む存在を、闇の中で心待ちにしているのかもしれない。(今川友美)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

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