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連載コラム(3) 肌で感じる鹿角街道

 肌で感じる鹿角街道

 「おーい、あけびがなっているぞ」「こっちには、きのこだ」。紅葉が盛りとなった、七時雨山麓の小道に、にぎやかな声が響いた。 

ガイド(右)の説明を聞く参加者らガイド(右)の説明を聞く参加者ら

民家の脇を通り抜け、荒屋一里塚に向かう民家の脇を通り抜け、荒屋一里塚に向かう

 丘から見下ろす荒屋新町と七時雨山

丘から見下ろす荒屋新町と七時雨山(右奥)

あけびを手に取る女の子あけびを手に取る女の子

 

 10月中旬の週末、城下盛岡から旧鹿角郡(秋田県)までを結んだ鹿角街道の見どころを歩くツアーが開かれ、市内外から約50人が参加した。 

 朝、マイクロバスがスタート地点の「七時雨一里塚」に着くと、雨が強く降り始めた。「『日に7度時雨れる』と言い伝えられているのが七時雨山なので、あと6回は覚悟しておいてください」。雨具に着替える人たちに、ガイドらがそう言って和ませた。 

 七時雨一里塚は、西に向かう人にとっては、街道一の難所といわれる七時雨山の峠を越え、ほっと一息つけることを意味した。南に向かう人にとっては、これから始まる難所に備え、気持ちを引き締める場所だったという。 

 360度、山々を眺望できるこの開けた景観も、道行く人それぞれに見え方が違っていたとは、なんとも興味深い。 

 しばらく進むと雨がやみ、「あ、見えた」と誰かが立ち止まる。振り返ると、一瞬の晴れ間から七時雨山の2つのピークが顔をのぞかせていた。歓声がもれた数分後には、また雲に隠れてしまう。 

 「右に櫻松神社、左に寺田」と書かれた追分碑を過ぎた頃、隣を歩いていた盛岡の70歳代の男性が、あけびについての懐かしい思い出を語り始めた。 

 「毎日4里を歩き、いくつもの峠を越えて、小学校に行った。途中、必ずおなかがすくから、紫色のがぷらぷらしているのを見ると、『やった、あけびだ』と言って、食べたものだ」 

 ひょいと、もぎ取って食べている少年と、江戸時代、街道を行き来した人たちの姿が重なった。 

 昼食後、寺院の境内のカツラから放たれる甘い香りに誘われつつ、民家の脇を通り抜け「荒屋一里塚」へと向かう。 

 午前は、生活感がただよう舗装路歩きが中心だったが、午後はふかふかな落ち葉の山道へと景色が一変し、一気にタイムスリップした感じがする。 

 「七時雨一里塚が『眺望の一里塚』と言うならば、こちらは『木漏れ日の一里塚』でしょうか」とガイド。 

 さらになだらかな坂道を進んでいくと、小高い丘に立った。宿場町として栄えた荒屋新町の町並みが見下ろせた。 

 国道を走るバイク、高速道路の高架橋を走る車が風を切る音、グラウンドで野球を練習する子供たちのかけ声が、風にのって時折、聞こえる。足を止め、しばらく耳を澄ましてみることにした。 

 歩き始める前の、地域の歴史を学ぼう、古の旅人に思いを馳せようという大仰さは薄れ、時代や景色、音、自然、歩くという行為が、ない交ぜになっていく感覚に、この時、私は身を委ねていた。 

 曲田集落へと抜け、雨でぬかるむ足場を、それからも一歩一歩確かめるように進みながら、午後3時過ぎ、全行程の約10キロを歩き終えた。 

 ガイドの一人で、あしろ歴史夢街道の会の小山田和義さん(64)は、「まずは実際に歩いてもらうことで、参加者自身がそれぞれに、肌で感じるものを大切にしたかった」とツアーへの思いを語った。過剰な説明はあえて控えようと、仲間とも事前に確認し合ったのだという。 

 帰りのバスを見送る小山田さんたちの背中を遠くに眺めながら、そんな地域の人たちの懐の深さも伝わっていますようにと願った。(今川友美)

  

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