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連載コラム(17) とびっきりの花咲か爺さんを

とびっきりの花咲か爺さんを

花咲か爺さんだけでこんなにも
花咲か爺さんだけでこんなにも

読み聞かせを担当する田村さん
読み聞かせを担当する田村さん
「おはなしのじかん」の様子(市立図書館提供)
「おはなしのじかん」の様子(市立図書館提供)

 市立図書館では毎月第2、4土曜日、子供たちに絵本や紙芝居を読み聞かせる「おはなしのじかん」が開かれている。昨春から私も、読み手のボランティアに加わっている。

 4月末のことだった。茶色の山肌には白や薄紅、足元には雪解けを待ち望んだ野の花が百花繚乱、咲き始めようとしていた頃。そんな季節にふさわしい作品が、今回のテーマとなった。

 仲間たちと相談し私は、枯れ木に花を咲かせましょうのフレーズで親しまれてきた日本の昔話「花咲か爺さん」を読むことになった。

 ところが絵本コーナーや倉庫を探してみると意外なことが分かった。同じタイトルでありながら、書き手や描き手が異なる花咲か爺さんが、10冊近くも出てきたのだ。ひとまず私は持ち帰り、1冊1冊を読み比べてみることにした。

 心の優しいおじいさんとおばあさんのもとにやってきた白い子犬が次々と幸福をもたらす一方、なんでもかんでも真似ばかりしようと企む隣のいじわるなおじいさんには、次々と災いがもたらされるという大筋の流れは、どの本も大差なかった。

 だが結末は、心優しい老夫婦が幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし、とだけにとどまっているものから、目を覆いたくなるくらい残酷で生々しい写実をしているものまで実にさまざまだった。

 "意地悪じいさん"のような事がらは、なにも昔話の世界やその時代にとどまらず、今もどこかで繰り返され続けている。そんな世の荒波に揉まれながら、子供たちは大人になっていく。

 幼少時代からこの図書館に足しげく通い、現在は読み聞かせ担当の読書指導員として働く田村真衣さん(26)が、ある日何気なくボランティアらと話していた内容が印象に残っている。

 「子供時代には、どんな意味だったかわからなかった絵本も、大人になってふと、あれはこういう意味だったのかなと思い出すことってありますよね」

 まだ言葉を知らない子供たちに、言葉というものを知ってしまった大人が伝えるという作業は、当たり前で簡単なようで、そうではないなにかを示唆しようとしているように私には感じられた。

 この場所で少女から大人になった田村さんはきっと、絵本には、言葉を覚えてしまった私たちがしまいこんでしまった原石が眠っているのだと、信じているのではないか。

 そんなことをぼんやり考えていたら、10年後、20年後の、ここに話を聞きに訪れる子供たちに、言葉でありながら言葉でない、でも温かな"記憶"の芽を心に残せるような、とびっきりすてきな花咲か爺さんを選ぼうではないかと、私は心に決めた。

 これは、ごくごく個人的なエピソードの一つにすぎないけれど、秋も夜長、大人も子供も、とびっきりの一冊と出会いに図書館へ足を運んでみてはいかがだろうか。(今川友美)












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