トップページ  >  組織から探す  >  産業建設部  >  商工観光課  >  連載コラム(13) とっておきの風景

連載コラム(13) とっておきの風景

とっておきの風景

 寺田地区の地域活動の拠点「寺田コミュニティセンター」は、未来の子どもたちに残したい、ふるさとの自然や歴史の風景を「寺田百景」として発掘し、語り伝えていく取り組みを、昨春から始めた。

涼川河川公園(野口集落)
七時雨山(奥)から注ぐ染田川

田を耕す小前田さん
田を耕す小前田さん
畠山さんとっておきの風景
畠山さんとっておきの風景

私の1枚
筆者の寺田百景

 春もたけなわとなった4月下旬の昼下がり、センター長の畠山城司さん(67)とカメラを持って、百景を探しに出かけた。

 「ここから見る眺めは、寺田という町を一番よくあらわしているんですよ」。そう言って畠山さんがまず向かったのは、野口集落の河川公園という場所だ。公園といっても遊具はなく、川沿いに満開となって咲くソメイヨシノの並木を、近くに住む女性たちがのんびりと散歩していた。

 間近に見える山は、寺田地区のシンボル、七時雨(ななしぐれ)山(標高1063メートル)だ。日に七度時雨れるというロマンチックな由来や牧歌的な風景が魅力で、新日本百名山のひとつにも数えられている。

 「寺田の地形は、七時雨山から注ぐ染田川によって、段丘状に作られました。川の流れに沿い南北縦長で、起伏やうねりに富んだ集落や田園風景が、大変美しいです」と畠山さん。なるほど、ここはそうしたすべてを凝縮して物語っている場所というわけだ。

 寺田地区は江戸時代、南部盛岡藩により整備された鹿角街道という物流や人々の交流に、重要な役割を果たした歴史道が通っていることでも知られる。宿場町の面影を残した一角を通り過ぎ、次は新田集落へと向かった。街道一の難所といわれる七時雨の峠もかかえる、最北端の集落だ。

 山道を蛇行しながら進んでいくと、景色は次第に川から渓流沿いといった趣にさまがわりする。間もなく始まる田植えに向けて、農耕機で田を耕し始める人たちの姿もあちらこちらで見られた。途中、車を止め、その一人、小前田末太郎さん(79)に声をかけた。

 昭和30年頃までは、一家に一頭以上は牛馬が飼われていたという寺田地区。「子どもの頃は、牛の首や胴に器具をくくりつけて、ロープで右へ左へと舵取りをしながら耕したものでした。今は、ありがたいことに、この一台ですむようになりました」と懐かしんだ。

 すぐそばの枯れ木色の斜面には、コブシの白がぽっと光を放っていた。「昔から、この花の開花時期を目安に準備を進めてきました」と小前田さんはうれしそうに語った。農具の近代化が進み、農村の風景はがらりと変わった。それでも、春を心待ちにする気持ちは変わらない。

 日が傾き始め「締めくくりに畠山さんとっておきの百景を」とお願いし、小高い丘に立った。生まれ育った荒木田集落を一望できるこの場所で子ども時代、夏は鬼ごっこをしたり、ざわめく雑木林の音に耳を澄ましたりした。冬はスキーで何度も滑った。

 「まだ手つかずの風景を、今のうちに収めておきたいですね」。おじいちゃん、早く早く、と畦道を駆け回る孫たちを目を細めて見つめながら、語った。(今川友美)

ご意見・ご感想をお寄せください
郵便番号028-7397 岩手県八幡平市野駄第21地割170番地
商工観光課観光振興係
電子メール shokanka@city.hachimantai.lg.jp

【広告】