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連載コラム(11) 春はすぐそこ

春はすぐそこ

 長い冬が明け、里のほうは、すっかり春めいてきた8日、まだ雪深い八幡平の松川温泉峡雲荘でガイドをつとめる福島亨さん(71)と温泉周辺を歩いた。

早春の原生林を案内する福島さん
早春の原生林を案内する福島さん

②	大きい「根開き」にびっくり

大きな根開きにびっくり

③	いち早く姿を現した水芭蕉

いち早く姿を現した水芭蕉

 ブナの原生林に囲まれた、渓谷沿いに位置する松川温泉は、やさしく青みがかった乳白色の湯に入りながら、四季折々の変化を感じることができる。3軒の旅館は、秘湯という雰囲気がぴったりで、それぞれに風情がある。

 宿を出たときの気温は、マイナス2度。でも、柔らかな陽光が、意外な暖かみを感じさせてくれる。まず初めに、と案内されたのは雪解けの湿原からわずかに顔をのぞかせたういういしい水芭蕉の群生だった。

 「もういいかい」「まだだよ」。そんなやりとりを繰り返しながら、待ち焦がれた幼子が、ひょこっと布団から起き出し、伸びをしているようだ。

 いよいよ林へと入っていく。冬季閉鎖中の樹海ラインのゲートをくぐり、高い雪の壁をよじ登ると、スノーシューを履いた。新雪の時期と違い、雪は硬く、歩くとじゃりじゃりとした音がする。

 見渡すと、ある面白い現象が起こっていることに気づく。根の周りだけ雪が解け、くりぬかれたように茶色い地面が見えているのだ。ぽこ、ぽこ、と。巨大なもぐらたたきゲームが出現したかのようだ。

 「根開き」と呼ばれるもので、日照時間が増え、木の温度が上昇すると起こる。雪国の春を知らせる風物詩のひとつで、「木が生きている証拠」だと福島さん。

 途中「ここだけは、私の踏み跡をちゃんとつけてきてください」と言われ、近くにぽっかりと天井が開いている場所に気づいた。覗くと空洞になっていた。そこは川だといい、耳を澄ますと雪解け水がゴーとすごい勢いで流れていた。

 しばらく聞き入っていると、福島さんはカモシカの足跡を発見し、急斜面をたどり登っていった。「ちょっと来てみて、早く」と声がした先に向かうと、新芽をかじった跡がいくつもあった。

 歩いていて、気づいたことがある。土で黒くなった雪面のいたるところに落下物が散乱しているのだ。紅葉の落ち葉、木の枝、山葡萄のツル、木の実......。「春の嵐が吹いたからね。この時期ならではの風景ですね」。福島さんは、それら一つ一つを拾っては、いたずらっぽい表情で見せてくれるのだった。

 だが、そんな光景が見られるのもあとわずかだという。「あと10日もすると、トップバッターのブナが一斉に芽吹く。萌木色の世界がぱあっと広がって、それはそれはすごいんだ」

 春はすぐそこまで来ている。(今川友美)

動物にかじられた新芽の跡

動物にかじられた新芽の跡

嵐のあと

嵐のあと

ネコヤナギの新芽

ヤマネコヤナギの新芽

冬芽もぷっくり

冬芽もぷっくり

冬季限定の四輪駆動のボンネットバスと出会えるのもあとわずかだ

冬季限定の四輪駆動のボンネットバスと会えるのもあとわずか

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